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2009.12.29

トップアスリートインタビュー 第1回高岡寿成さん Part1


2005年東京国際マラソン優勝ゴール
写真提供「報知新聞社」

フルマラソン日本記録保持者に聞く“マラソンの心得”   

2010年で第44回を迎える青梅マラソン。前日に行なわれるトークショー(青梅信用金庫協賛) も恒例となっているが、今回のゲストは男子フルマラソン日本記録保持者の高岡寿成さん(カネボウ陸上競技部所属)に決定した。2009年に現役を引退、現在は指導者としてオリンピック選手の育成に力を入れる高岡さん。青梅マラソンとの関わりや走る楽しさ、また、マラソンの心構えなどについて話を聞いた。

●数奇な運命にある高岡さんと青梅マラソンの関係

――今回は青梅マラソンのトークショーで講演されるとのことで、ファンの方々も楽しみにしておられると思います。  

マラソンブームでもありますから、(トークショーでは)走る楽しさをお話したいですね。今は長い距離を走る目的が、ダイエットのためだとか、健康のためだとか、イメージが良くなってきてるじゃないですか。今までと同じように街を走ってるだけなのに、「あの人、頑張って走ってる」って思われるのはいいことですよ。
昔は格好良く走りたい、きれいに走りたいと思っても、ランニングアイテムが少なかったですから。見た目がきれいじゃないから、汗臭いイメージがありましたけど、今はそうじゃないでしょう? アイテムが格好良いので、苦しくても楽しんでるように見える(笑)。それらが強く伝わってくるのが最近のジョギングだと思うんです。

――高岡さんと青梅マラソンは、数奇な運命にありますよね。1度目の2003年を直前のケガでキャンセルされ、2度目の2008年がまさかの大雪で大会中止。振り返ってみて、青梅マラソンにはどのような思い出がありますか?  

縁がないなって思いますね(笑)。よくあることなんですが、一度走って良い結果が出た大会はゲンの良い試合だって思うことがあるんですよ。調子が悪くても、その大会に出たら走れるって。そういった不思議な力があるものなんですけど、その全く逆のパターンですよね。それは2回目の雪の時に強く感じました(笑)。
1回目の時も残念でしたけどね。あの時は青梅の現地に入っていながら、止めることを決断したんですよ。どうしても足の調子が良くなくて、目標としているアテネ五輪を考えた時に、その時点で走るのはマイナスだと思えたものですから。
なので、今回のトークショーが3度目の正直です(笑)。まあ、ある意味ではぼくにとって魅力的な大会かもしれません。走りたくても走ることが叶わなかったという意味ではね(笑)。

●青梅マラソンを走るにあたってのアドバイス

――青梅マラソンは30キロレース。フルマラソンとはニュアンスが違いますが、ペース配分などで、どのように気を使うべきでしょうか。

確かにフルマラソンとは全然違うものだと思います。選手の中にも、30キロは走れるけどフルマラソンは走れないっていう人もたくさんいますから。ぼくの場合も、トラック競技からマラソンにステップアップする時に、熊本の30キロレース(熊日30キロロードレース)に参加したんですよ。30キロのレースはそういう利用も考えられますよね。ハーフマラソンとも違うものですし、距離の分だけ、いろいろと感じるものがあっていいんじゃないかと思います。

――青梅マラソンが大雪で中止になった例もあるように、特に冬場のマラソンは冷雨や雪といったコンディションになることも予想されます。そうした悪コンディションの中で気をつけたいポイントはどこでしょう?

まずはしっかりした準備です。クリームを塗ったり、手袋をつけたり、普段からの準備運動を含めてね。十分に体操をして、ウォーミングアップのつもりで多少走って体を温めてから、ペースを上げていった方がいいと思います。
ぼくは現役の時、ケガをすることが多かったんですよ。ですから関節部分は十分に回して、可動域を大きくするようにしてました。特別、これといった効果的な準備運動というのはないんですが、一通り入念なストレッチはするように心がけています。

――市民マラソンでも目標を設けることは必要ですよね。  

もちろんです。完走が目標の人もいれば、4時間を切ることが目標の人もいる。そういった目標があるからこそ人って頑張れるんですよ、どんなことに対しても。目標をクリアしたら、今度は欲が出てきますから、また次の目標を設けることになる。
青梅マラソンは関東では昔から人気のある大会で、ぼくは「青梅を走ったらすごい」って認識がありました(注:高岡さんは京都の出身で、大学も京都の龍谷大学)。最初に出たいと思った動機は、西の熊日30キロで優勝してたんで、東の青梅でも勝ちたいと思ったからなんです。それに今、30キロのレースを行なっているのがこの2大会しかないので、このまま距離を変えずに続けてほしいですよね。陸上選手の場合は記録を考えて熊日に参加することが多いんですが、青梅の起伏のあるコースをしっかり走ることが自信につながる場合もありますし。
青梅マラソンを走ろうと選択したのも、こっちの方がアテネオリンピックのマラソンコースにつながると判断したから。起伏が似てたんですよね。アテネと同じように上がって、下りていくという感じで。

――市民ランナーの方々を見ていて思われることは?

皆さん、本当に走るのが好きだということ。本当に好きな人は、仕事が終わってから走ってるわけでしょう? だから市民マラソンなんかに行くと、情熱を感じてすごいなと思ってしまうんです。楽しそうだなあとも思うし。
誰もが、最初に走りたいと思った動機は、「走るのが好き」とか「楽しい」という気持ちになれたからだと思うんですよ。ずっと続けていると、その感情を忘れがちになってしまう。勝負で結果が出ない時なんかはなおさらね。でもそんな時に、市民ランナーの姿を見て原点に戻るって経験は多かったですよ。

――青梅マラソンを走る人たちにメッセージをお願いします。  

楽しく、今日ここに来て良かったと思えるように走ってほしいです。そしてまた来年も出たいと思ってほしい。現実的には、事故やケガなども可能性としてあるわけですから、それらを考えると決して無理はされない方がいいとも思いますが。止める勇気も大切なんですよ。ぼくも現役最後のレース(注:2009年の東京マラソン)で、ゴールも大切だけど、途中で止めるのも大切だと思って止めました。楽しく走って、来年も走りたいっていう気持ちを持つ、それを感じながら走ればいいんじゃないかな。

高岡寿成(たかおか・としなり) 
1970年京都府生まれ。洛南高から龍谷大を経てカネボウに入り、現在は同陸上部のコーチを務める。94年広島アジア競技大会で男子5000mと10000mの2種目を制覇。96年アトランタ五輪代表。00年シドニー五輪で男子10000mにて7位入賞を果たす。その後マラソンに転向し、初マラソンは01年12月の福岡国際。02年10月のシカゴマラソンで2時間6分16秒(現在日本男子の最高記録)の日本記録を樹立して3位に入る。マラソンだけでなく、3000m(7分41秒87)、10000m(27分35秒09)でも現在の日本記録を持つ。

インタビュー記事Part2はこちらから

高岡さんもゲスト出演!
青梅マラソン大会恒例のトークショー
AOSYN PRESENTS 第44回青梅マラソンスペシャルトークショー 

開催日:2010年2月20日(土)
※第44回青梅マラソン大会前日
時間:午後3時~午後4時
会場:青梅市総合体育館(入場無料)
ゲスト:高岡寿成さん、千葉真子さん