ゲスト

2010.2.08

トップアスリートインタビュー 第2回マーラ・ヤマウチさん Part1


2009年青梅マラソン女子10キロ優勝ゴール

連続出場している青梅マラソンの魅力とは?

北京五輪女子マラソン6位入賞の実力を持つマーラ・ヤマウチさん。青梅マラソンでは、2009年に女子10キロで優勝し、 史上3人目の3連覇を達成した。今年は30キロの招待選手として、再び青梅の地に戻ってくる。大会に参加するのは今回で5回目(うち第42回大会は大雪で中止)となるマーラさんに、青梅マラソンの魅力や、食事についてのアドバイスを聞いた。

●青梅マラソンへの想い

――2009年は女子10キロで優勝し、3連覇を達成されましたね。

自分自身も同じ大会で3連覇というのは初めてだったので、うれしかったです。特に、4年前(第39回)に初めて参加した大会では、10キロコースの自己ベストタイム(31分43秒)でゴールできたので、とても印象に残っています。青梅マラソンは、春のマラソン大会に向けて良い刺激になるので、毎年参加しているんです。たくさんの方が沿道で応援してくださる中で、大勢の市民ランナーの方と一緒に走れるのが楽しくて。開会式の歌や太鼓などのセレモニーもすごいので、すごく楽しい週末ですね。

―――10キロはどのようなコースという印象ですか?

ゆるやかなアップダウンのあるコースなので、良いタイムを出しやすいと思います。前半5キロのゆるい上り坂をペースを落とさずに頑張って、折り返してからブレーキを抜いて飛び出せば、後半5キロは下り坂なので良いタイムが出るんじゃないでしょうか。急な下り坂だと足に負担がかかってなかなかスピードが出せないのですが、本当になだらかなので、結構スピードが出せるんです。カーブが少ないので走りやすいですしね。自己ベストタイムを狙う人やスピードを出したい人に向いています。

もちろん、きれいな梅の風景や沿道の応援もすごいので、ゆっくり楽しく走りたい人にも良いコースだと思いますよ。

―――今年は10キロではなく、30キロに参加されるということですが。  

青梅マラソンは30キロレースでは世界的大会なので、以前から30キロに挑戦してみたかったんです。今までは、その後に控えているレースの予定や練習の段階を考えたら10キロの方がよかったのですが、今回は30キロにしました。青梅マラソンの30キロは初めての参加なので、どれくらいのスピードを出せるかわからないのですが……無事にいいタイムで完走できるように頑張りたいと思います。アップダウンが激しいタフなコースだと聞いているので、今から楽しみです。

実は昨年4月にケガをしてしまって、半年も走っていなかったので、徐々に練習を再開して、今年2月からレースに復帰する予定です。2月7日に香川丸亀国際ハーフマラソンに出場して、その2週間後に青梅マラソンで30キロを走り、4月にはロンドンマラソンでフルマラソンに挑戦します。

●市民ランナーに向けた食事のアドバイス

―――トップアスリートとして活躍されていますが、普段の食事で気を使っている点はありますか?

普段から、できるだけ健康に良いものをバランスよく取っています。特に和食がおすすめですね。和食はバラエティに富んでいて、ご飯、味噌汁、おかず、小鉢が2つくらいあれば、品目の数が20~30になるのでバランスがすごく良いのです。栄養価の高い海藻、貝類、大豆などが自然に取れるのもうれしいですね。

―――レース前日や当日の食事はどのようなものが良いですか?

前日は、身体を動かすためのエネルギー源となる、炭水化物を多めに取ることがポイント。例えば、力うどんやパスタ、ご飯の大盛りとか。当日は、普段から食べ慣れているものを食べる方が良いです。不慣れなものを食べると、おなかを壊したり、不安になる原因になるんですよ。レース途中でトイレに行きたくなったら困るし、なるべく消化に良いものを食べることが大切です。

―――マーラさんご自身は、どのようなものを食べているのですか?

私の場合、フルマラソンの前は、お餅とゆでたまごとオレンジジュースを取ります。ハーフマラソンや10キロレースの前は、ご飯とちょっとしたたんぱく質、オレンジジュースくらいの、消化しやすい軽い食事が多いですね。

私はおなかいっぱいで走るのが嫌なので、大体3時間くらい前に食べますが、選手によっては1時間前に食べる選手もいるんですよ。食事を取る時間は好みによって違うので、大会の何週間か前に、レース当日に食べようと思っているものを食べて、実際に走って試してみるのが良いと思います。うまくいけば、当日もそれを同じ時間に食べれば良いし、足りなかったら食べる量や時間を調整して、もう一度試してみる。自分に合う食事や時間帯を実験的に試してみるのが一番です。

―――事前に自分にとって走りやすい環境を知り、整えておくということが大切なんですね。

そうですね。レース当日の水分補給でも同じことが言えます。ドリンクが合わず、レースの途中でおなかを壊したり、気分が悪くなってしまったら大変なので、大会前の練習の時点で、支給されるドリンクや自分で用意するドリンクを飲んで試してみるのが良いです。

あと、昨年の青梅マラソンは2月にしては暑かったんですよ。暑い日だったら汗をたくさんかくので多めにドリンクを飲んだり、寒い日だったら飲む量を減らしたり、当日の天候によって調整する必要がありますね。

―――他に食事面で気をつけた方が良いことは?

レースや練習が終わったら、すぐに食べたり飲んだりすることですね。ちゃんとした食事でなくていいのですが、おにぎりやスポーツドリンクとか、バナナとリカバリードリンクとか。走った直後に食べると、栄養の吸収率が良く、筋肉のリカバリーが早くなるんです。しばらく経ってしまうと、リカバリーに時間がかかってしまう。なるべく15分以内に、食べたり飲んだりしましょう。

マーラ・ヤマウチ(まーら・やまうち) 1973年英国オックスフォード生まれ。英国外務省1等書記官(休職中)。英国では、女子マラソン世界記録保持者ポーラ・ラドクリフに次ぐ、女子マラソン英国歴代2位の記録(2時間23分13秒)を持つ。オックスフォード大セントアンズ校で陸上を始め、04年にロンドンで初マラソン。08年北京五輪英国代表として6位入賞。2009年には、マラソン(2時間23分12秒)、ハーフマラソン(1時間8分29秒)ともに自己ベストを更新。02年に日本人の山内成俊氏と結婚した。