大会レポート

2019.2.17

【第53回大会前日レポート】AOSYNスペシャルトークショー

大会の開会式が行われた青梅市総合体育館では、その後「AOSYNスペシャルトークショー」が開催されました。

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今回のゲストはシドニーオリンピック 金メダリストの高橋尚子さんと、アテネオリンピック 金メダリストの野口みずきさん。MCはゲストランナーとして30kmの部に出場予定の福島和可菜さんです。まずは、お二人に青梅マラソンの印象を聞いてみました。

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高橋さんは「リピーターの方はご存知だと思いますが」と切り出した上で、「青梅はものすごくきついです」と話しています。

「15km上って、そして下るというイメージですね。渓谷なので景色はきれいですが、行きはよいよい……ではなく、行きから苦しい坂が待ち構えています。ただ、走り終わった後の達成感はありますね。ここで30kmを完走できれば、どのマラソンも簡単に走れると思いますよ」(高橋さん)

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一方の野口さんは前回、仮想アテネオリンピックとして走ったので、いい予行練習になったそうです。上りが好きなので、グイグイ上って、気持ちよくゴールできたのだとか。

「ただ、監督がゴールで迎えてくれたんですけど、ヤクザみたいないかつい顔で、パンチパーマだったせいか、警備員に連れていかれそうになっていました。『私の監督なんです!』と止めたのを今でも覚えています(笑)」(野口さん)

また、野口さんにとって青梅マラソンがいいステップアップになったように、高橋さんにとっても青梅はいい転換点だったそうです。

「私は試合が終わったら8キロぐらい太るんです。それを半年かけてベスト体重にもっていくんですけど、シドニーオリンピックの出場後はテレビや新聞に出る機会も多かったので、大バッシングを受けました。外に出るのも怖くなっていたときに、小出監督に『青梅マラソンに出るぞ!』と言われて。2週間猛特訓して出場したら、日本新記録がとれたんです。この走りが世間に好意的に受け止められて、苦しい日々を抜けださせてくれました」(高橋さん)

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ここで、福島さんから会場に質問が。「準備練習ばっちりだという方いますか?」と聞いたのですが、あまり会場からは手があがりません。そこで、金メダリストのお二人に、マラソン前日にするべき準備を聞いてみました。

高橋さんによると、まずどんなに準備ができていなくても、前日に過度に走りこむのはNGとのこと。このトークショーに来ている人は、家から電車などで移動してきて、受付に並んでいるので、それでもう走らなくても十分なのだそうです。

では、何が重要かというと、それが食事です。野口さんは、前日は炭水化物をご飯で、たんぱく質をお肉で取るのだとか。これは高橋さんも同じで、「小出監督も闘争心が出るからお肉を食べろと言いましたが、その前にたくさんの炭水化物を取るように言われました」ということです。レース前に体にエネルギーを蓄える、いわゆるカーボローディングですね。ただ、高橋さんのカーボローディングは、ちょっとユニークでした。

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「うどんにお餅を入れて、それをおかずにご飯を食べるんです。当日の朝もお餅を3つ焼いて、それをおかずにご飯を食べるという、真っ白な食卓です(笑)」(高橋さん)

ちなみに、野口さんはレースの朝はご飯、焼きじゃけ、小鉢といったラインナップだったようです。ただ、野口さんがレースの4時間前に朝食を摂っていたのに対し、高橋さんは3時間前に食べていたのだとか。これは、高橋さんのメニューの方が消化がいいので、少し時間を遅らせていたようです。さらに、お二人とも、レースの2時間前にはカステラを食べていたといいます。

それと食事関係でもう一つ大事なものとしてあげられていたのが禁酒です。高橋さんによると、特にレース前日の飲酒はNGだとのこと。アルコールを摂取すると、それを分解するために体内の水分を使ってしまうため、レース中に脱水症状になる恐れがあるのだそうです。

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「まぁ、どうしても飲みたいなら、2杯まではOKです(笑)。ただ、それと同じだけ水を飲んでくださいね」(高橋さん)

さて、ここまではレース前の準備についてお二人にお話をお伺いしましたが、レース直前やレース中についても、気を付けるべきポイントを聞いてみました。

まずは、レース前のアップについてですが、高橋さんによるとアップ後に7分間じっとしていると、その効果はゼロになってしまうそうです。お二人は少しでも身体を冷やさないよう、レース直前までダウンジャケットなどを着ているそうですが、普通は難しいですよね。

そこでオススメというのが、スタート地点で体操しながら待つということ。混雑しているスタート地点で、ラジオ体操をしろということではないので、そこはご安心を。まずは、縄跳びをするように、軽くその場でジャンプします。これによって上半身がリラックスし、その感覚をレース中に思い出すことで、肩があがるのを防いでくれるということです。

そのほか、片足を前に出し、体重をかけるようにして、ゆっくりと膝を回すのも有効なのだとか。このとき、膝の内側、外側、下側……というように、体重が移っていくのを意識できるぐらいに、とにかくゆっくりと回すのがポイントなのだとか。これによって膝の周りの筋肉が動き出し、膝のケガを防いでくれるそうですよ!

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「あとは、足首が着地したときにブレないように、回りの筋肉もほぐしておきたいですね。つま先立ちして、体の右側に体重を移し、かかと立ち。さらに、体の左側に体重を移す……というように、時計回り・反時計回りに、それぞれ5回体重を移してみてください。これも、スタート地点で立っているときにもできる運動です」(高橋さん)

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また、野口さんには普通の体操の後にしているという、ブラジル体操を教えていただきました。大きく肩を後ろから前に、前から後ろにと回す。さらに、足を内側にあげるようにして腰をひねり、反対側の腕のひじを近づけるようにする。これで、レース中に腰から下がスムーズに動くようになるそうです。

青梅マラソンはスタート地点が混みあいますし、すぐに上りが始まるので、なかなかペースを上げることができません。ただ、野口さんによると、それがいいウォーミングアップになる、というぐらいに思っているのが良いのだとか。これには高橋さんもうなずいており、「その方が後半に力が出る」ということです。

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では、青梅特有の上り坂は、どうやって克服すればいいのか。これについて、上り坂が得意だという野口さんは、目線をちょっと下に向けるとよいと話していました。こうすることで前傾姿勢となり、歩幅が大きくなり、自然と足が前に出るようになるのだとか。

さらに、高橋さんによると、「私は子ザル」と軽やかに移動する自分をイメージすることで、「この上り坂で5人は抜ける」といいます。さらに、坂を上り切ったときに一息つかず、あと100メートルは上っていると思って全力で走ることで、上りの勢いをそのまま走りにつなげることができるのだとか。これで、また5人抜けるそうです。いやぁ、どんどん順位が上がっていきますね!

最後の下りは「私は石ころ」とイメージするという高橋さん。いつもより手を上げる、もしくは下げることでピッチを速め、軽やかに下りると足への負担が減るそうですよ。

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明日のレースでは、高橋さんは参加選手を後ろから追っていくそうです。そして、折り返し地点から帰ってくる選手たちとハイタッチをするとのこと。野口さんもどこかで走っているとのことなので、ぜひレース中にお二人の姿を探してみてはいかがでしょうか?