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第45回記念青梅マラソン大会の参加Tシャツを手掛ける、アーティストの高橋理子さんにインタビュー

2010-10-12
第45回青梅マラソン大会の参加Tシャツを手掛ける、アーティストの高橋理子さんにインタビュー

  工芸、ファッション、アートなど、あらゆるジャンルの垣根を越え、日本の伝統に進化を加えた作品を次々と生み出しているアーティストの高橋理子さん。その、“円と直線”を組み合わせたデザインが印象的な作品は、世代・性別・国籍問わず、さまざまな人の心を魅了してやみません。そんな高橋さんが、主催者の依頼を受け、記念すべき第45回青梅マラソン大会の参加賞Tシャツをデザインしてくださることになりました! アーティストとのコラボTシャツを作るのは、青梅マラソン大会としても初めての試み。すでにデザインも決まりつつあり、「どんな作品に仕上がるのかドキドキしますね」と、創作意欲を燃やす高橋さんにお話を聞いてきました。


——今回の依頼を受けてくださり、本当にありがとうございます。
高橋 約2万人という多くの方が参加するマラソン大会のTシャツを作るというお話にとても興味が湧きました。私はもの作りの背景を伝えたいという思いで活動しているので、ただ可愛いいTシャツが作れればいいということであれば、お断りすることも考えていました。ですが、青梅マラソンの歴史や、大会の主催者の方々がどのような気持ちで運営されているのか、参加賞Tシャツが担っている役割は何なのか、たくさんお話をしているうちに、青梅マラソンの歴史を築いてきた方々の熱い思いを伝えたいという気持ちになったんです。このTシャツが、主催者と参加者の思いを繋ぐきっかけになったらいいなと。

——参加賞Tシャツで青梅マラソンの背景を伝えるという、新たな挑戦ですね。
高橋 これまでのもの作りにくらべて、かなり多くの制約がある中で表現しなければならないというのも挑戦ですね。今年も引き続き、アシックスさんのTシャツにプリントを施す形なので、形状や素材、柄をのせる範囲にも制限があり、予算も限られています。そういったなかで、どこまで表現できるのだろうかと、多少の不安もありましたが、限られた中だからこそ、一点に集中し、深く追求できるのではないかとも思っています。制限がなくあまりに自由だと、どこまでも広く遠くにいってしまうし、ブレが生じる場合もあると思うんです。制限をひとつの指針ととらえ、その中でどこまで楽しんでもの作りができるのか。いまは、アシックスさんや制作に携わる方々と一緒に、小さくとも新たな挑戦が可能かどうか、探りながら試作している段階です。

 

——そう伺うと、普段の高橋さんの活動と通じることがあるように思えます。
高橋
 そうですね。私の作品は、正円と直線だけで構成したものですし、色数も多くありませんが、あえて制限を課すことで、見えてくるものがあると思っています。活動のすべてが実験ですね。限られたなかで、どこまで楽しく表現ができるのかという自分自身の挑戦でもありますが、一緒にもの作りに携わる人、例えば職人さんのリスクを最小限に抑えたいという気持ちもあります。失敗のリスクを最低限に抑えながらも、充分楽しいもの作りはできるし、新たなことへ一歩踏み出す力も生み出すことができる。今回のTシャツ制作に関しても同じだと思っています。


——その思いがあるからこそ、高橋さんの作品からは伝統的な部分と現代的な部分が感じとれるのかもしれません。
高橋
 私は表現者という意味で“アーティスト”として活動しています。美しいものや素敵なものを生み出すだけではなく、もの作りを通して、何かを考えるきっかけや、気付くきっかけを作っていきたいんです。固定観念を崩したいという思いもありますね。例えば、制限のある中で楽しむということは、かつての日本では当たり前だったと思うんです。だからこそ、着物のように無駄のないもの作りや、手ぬぐいのようにひとつのものに様々な用途を持たせたものが生まれたんだと思います。手ぬぐいも作っていますが、その手ぬぐいを通して、歴史や柄の存在意義、染色技法や職人さんの存在にまで思いを馳せてもらえるような表現を、手ぬぐいを使っておこなっているという感じですね。

 
——今回のTシャツをデザインされるうえで、気をつけたポイントは?
高橋 このTシャツは、とても機能性に優れた素材でできています。吸汗性や透湿性なども考えられているものなので、プリント部によってその機能を壊さないように心がけました。私もスポーツをやっていたので経験があるのですが、プリントの範囲が大きくてインクが厚くのっていると、その部分の通気性が悪くなり着心地が悪いんですよね。今回も、できるだけ大きくプリントしたかったので、その点を考慮した柄を作りました。

——円と線の配置などは、何か具体的なイメージに沿って構成されるのですか?
高橋 私は、季節や花など、何か具体的なものをイメージして柄を構成することは基本的にありません。例えばそのものの使い道や、機能や素材、技法、大きさ、存在意義など、そういった部分に影響を受けて、正円と線で柄を作っていくんです。今回も、プリント範囲や色数、素材の機能など、さまざまなことを考慮しながら線の太さやレイアウトを調整していくうちに、青梅マラソンで多くの方が走っている写真とイメージが重なったんです。はっきりとは分からないかもしれませんが、3人の人が並んで走っているような雰囲気になっています。

 

——完成が、ますます楽しみになりました。
高橋 ありがとうございます、私も楽しみです。青梅マラソンに参加する方の一番の目的は、楽しく気持ちよく走るということだと思うんです。もしかしたら、参加賞Tシャツなんていらないという方もいるかもしれません。でも、なぜ参加賞Tシャツがあるのか、主催者の方がどのような気持ちで大会を作り上げているのかということを考えたら、ただ受け身で参加するだけではない、何か違う気持ちが生まれるのではないかと思うんです。もしかしたら、より一層青梅マラソンに参加することに魅力を感じることができるかもしれません。私のTシャツのデザインには好き嫌いはあると思います。でも、私という人間が関わったことで、多くの方にマラソンを楽しんでほしいという主催者の強い思いが少しでも伝わればいいなと。参加する方々が主催者と一緒になって、今まで以上に大会を盛り上げようという思いを持って走ってくださったら嬉しいですし、この青梅マラソンに関わるすべての人が同じ気持ちで向き合うための、小さなきっかけになればと願っています。

 


高橋理子(たかはし・ひろこ) アーティスト
1977年生まれ。東京藝術大学で染織を学び、同大学大学院修士課程修了後、アパレル企業にてデザイナーとして勤務。その後、同大学大学院博士課程に再入学。2005年フランス外務省AFAAの招きにより、PARIS CITE INTERNATIONALE DES ARTS に滞在し活動。帰国後、2006年に株式会社ヒロコレッジを設立。プロダクトブランド「HIROCOLEDGE(ヒロコレッジ)」の活動を開始。2007年には、ミス・ユニバース日本代表の森理世氏のナショナルコスチュームを担当。同年8月、21_21 DESIGN SIGHT(東京ミッドタウン内)にて開催されたサマープログラム『落狂楽 笑 LUCKY LUCK SHOW』に参加した演者のひとり、柳家花緑師匠の衣裳を手がける。2008年3月、同大学大学院博士課程を修了し博士号(美術)を取得。現在、幅広いジャンルで活躍中。
http://www.hirocoledge.com/

 

 

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