「こんなきついコースは走ったことがない。毎年2万人近くが、このコースに挑戦しているなんてすごい」。

そう語るのは、第44回青梅マラソン大会女子30キロの部を制した、マーラ・ヤマウチ選手(英国)。これまで数々の猛者たちをうならせてきた青梅の難コースは、マーラ選手にとっても、想像をはるかに超えるものだったようです。
マーラ選手は、過去に青梅マラソン大会10キロの部で3度の優勝を果たしていますが、30キロに挑戦したのは今大会が初めて。「ラスト8キロくらいからは本当に苦しかった。ゴールするまで、優勝できる確信は持てなかった」。最後の力を振り絞るかのように力強く両腕をあげ、1時間43分24秒(04年の第38回大会で優勝した野口みずき選手の1時間39分09秒、01年の第35回大会で優勝した高橋尚子選手の1時間41分57秒 に次ぐ、歴代3位の記録)でゴールテープを切りました。

昨年は、5月に右かかと痛を発症し、出場を予定していた世界陸上競技選手権大会、札幌マラソン、ニューヨークシティマラソン……などをすべてキャンセル。レースに出場できない悔しさや焦りもあったと言います。徐々に練習を再開し、継続的にランニングができるようになったのは、昨年10月頃のこと。そして、今年2月7日に開催された香川丸亀国際ハーフマラソンで本格復帰し、今回の青梅マラソンで再起のV。走り終わった後は「すごく嬉しい」と顔をほころばせ、「4月にはロンドンマラソンでフルマラソンに挑戦する予定なので、すごくいい刺激になった」と確かな手ごたえを感じていた様子でした。さらに、「秋からはロンドン五輪(2012年開幕)の選考も始まるので、早く五輪の切符をつかみたい」と目を輝かせていました。

また「やっぱり青梅は、沿道の声援がすごく良い」と、大会の魅力についても再認識。「景色もすごく綺麗。ただ、先にある山を見ていると“どこまで登るの……”って(挫けそうに)なるから、山を見ないように集中して走りました(笑)」とも。途中、本当に辛かったときは、「よし、あの信号まで頑張ろう、次はあの看板まで、次はあそこまで……」と、残りの距離を自分のなかで少しずつ設定しながら走っていたことも教えてくれました。
青梅路を力強く駆け抜け、貫禄の強さを見せてくれたマーラ選手。「高橋大輔選手(男子フィギュアスケート)のように、ケガを乗り越えて活躍している選手もいらっしゃる。私もケガをしてしまいましたが、五輪サイクルで考えるとタイミングとしては良かったのかも。五輪に向けて練習を強化して頑張りたい」。これからのさらなる活躍が楽しみですね。
マーラ・ヤマウチ 1973年英国オックスフォード生まれ。95年オックスフォード大セントアンズ校で陸上を始め、10000メートルなどで活躍。04年ロンドンで初マラソン(17位)。英国代表で出場した08年の北京五輪は、女子マラソン6位入賞。フルマラソンの自己ベストは昨年のロンドンの2時間23分12秒(2位)。